寝返り動作の動作分析①の続きです。

寝返り動作の動作分析①で紹介した内容。
その中で着目したいのは
・支持基底面の変化
・重心位置の変化
・回旋動作
・肩・股関節の可動性


支持基底面の変化について
支持基底面は、体重(重力)により床への圧を感じることができる身体支持面とその間にできる底面。
これが広いほど身体は安定します。
例えれば、足を閉じて立つのと開いて立つのはどちらが安定してますか?という話です。
広いほど安定しているのであれば、狭くすると不安定になる=動作がしやすくなる!
それが、頭頚部を屈曲することや膝立ちをする意味のひとつです。
下記の図は、頭頚部を屈曲、両膝立ち時の支持基底面の変化を表します。
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よく、片麻痺の方が寝返る際に、麻痺側下肢を非麻痺側ですくい上げる動作、こういった要素に起因するところもあります。

重心位置の変化について
重心は高いほど不安定です。幼児期は頭部の重さにより転びやすい。ということはご存知かと思います。
例えれば、低めに荷物を積んだトラックと積載量オーバーで荷物を積み上げたトラックのどちらが不安定なのか?という話です。走行しカーブに差し掛かった状況を考えるとゾッとしますね(笑)
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寝返りの際、頭頚部を屈曲することや膝立ちをすることのもうひとつの意味分かりましたか?
加えて、両上肢を前方挙上すると…もっと不安定になりますね!

支持基底面と重心の関係
三角形で例えるとわかりやすいです。
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△は基底面が広く、重心は下にどっしり。安定感抜群!ということは、動きがでにくい。
▽は頭でっかち、足元フラフラ。転びやすい。ということは、ちょっとの力で動きやすい。

回旋動作
回旋動作をするにしても、頭から足まで一本の棒のように寝返りをするのは大変困難。
無論、重心位置の問題や力源が作りにくい問題もありますが、広い支持基底面を一気に動かすのは大きな力がいります。
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(実際の重さは25%ずつにはならないですが…)

肩・股関節の可動性
寝返る方向の肩関節(肩甲上腕関節)を固定したまま、寝返ることは可能でしょうか?
かなり苦労すると思います。
また、股関節は、肉付きの良い人には固定したままでも問題なく寝返れますが、
痩せ気味の方は大転子が回旋動作を妨げたりします。


ざっと簡単に上げましたが、これらの要素が使えない場合、
努力性が増しやすくなると考えられます。

なぜ、これらの要素が使えないのか?
そこを導き出すヒントになるのが、評価。

そして、もし、寝返りが自立していない方がいたら、どんなことが予測されますか?
寝返り困難→褥瘡→定時的に体位変換→在宅での家族の介助負担増
寝返り困難→肺胞虚脱→無気肺→呼吸機能低下→咳嗽・喘鳴増加→誤嚥性肺炎リスク増加
などなど…

寝返り動作の動作分析①でも書きましたが、これはひとつの考え方。

患者さんを担当しているのは自分です。
事例に当てはめようとせずに、この考え方をきっかけとして、
自分の思考力を高めてください。

その思考力の糧になるのは、基礎学力。
そして、立証を助けてくれるのは、過去の論文や文献です。

私もまだまだですが、『あ〜そうなんだ!』という気持ちになると
語弊がある表現ですが、楽しくなります。

そんな実習であるようにお祈りいたします。






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